各種サンゴに必要な光の量から考えるLED設定と置き場所

はじめに

出力を簡単に調整できる高性能LEDが増えてきていますが、以下のように迷った方もおられると思います。

  • どのような設定にするべきか分からない。
  • サンゴを買い足したりした場合にどの場所に置くべきかが分からない。

かといって、ネットで調べてもまとまったデータがなかなか見つからなかったりして、判断するのに必要となるサンゴが必要とする光の量に関する定量的なデータを見つけられません。

サンゴをどのように置くべきかについて判断が出来ないとサンゴを長期的に維持することが出来ないため、定量的データを知ることは非常に重要です。

そのため、私が海外含めた掲示板や様々な場所からメモしていたデータを公開することで、0よりはましかもしれないと思って、参考となる定量的データを公開することにしました。

 

各種サンゴに必要な光の量

PAR値とは?

光は波長によって色やエネルギー量が違います。そのため、用途によって重要な波長が違っています。光合成の場合は、400nm~700nmの波長の光が有機合成に使われます。そのため、この波長の強さが重要で、それ以外の光の量が強くても意味がありません。

PAR値は、この400nm~700nmの波長の光の強さを表したものになります。単位はW / m2です。

英語ではPhotosynthetically active radiationといい、日本語では光合成有効放射といいます。

専門的なことを少し調べてみたところ、400~700nmの範囲の光合成有効光量子束密度PPFD(単位μmol m-2s-1)という、単位面積当たりの光子の数を測定することが多いようです。

400~700nmのPPFD = PARなのかまでは素人には分かりませんでした。

太陽のPAR値は真夏の空気中で最大で2000 (μmol m-2s-1)程度あるようです。ただ、サンゴの場合は水中にあるので、もっと低いと思われます。

 

どうやって測定するのか?

PARメーターを使います。アクアリウムで使われているのはApogee社のMQやSQシリーズのものです。この測定器はPPFDを測定しているので、単位はμmol m-2s-1にて表示されます。

 

各種サンゴに必要なPAR値

私が今まで電車の中でちまちま調べたり、家で時間があるときに調べたりして収集していたデータを一覧表にしたものになります。本来出典を明確に示すべきなのですが、様々な場所から集めたデータであり、空き時間等に調べたので、出典場所までメモしきれていないものです。

よって、以下のデータはあくまで参考程度にしてください。記憶によれば、野生個体が存在していた場所の光合成有効放射(PAR)の値であったり、ある飼育者の飼育データであったりが混ざっているものになっています。

種類 PAR (μmol m-2s-1)
Minimum Ideal Maximum
シカツノサンゴ 280 310 330
コユビミドリイシ 85 330 600
ヤッコミドリイシ 10 80 200
スギノキミドリイシ 170 340 600
オヤユビミドリイシ 170 340 600
ツツハナガサミドリイシ 50 110 450
コエダミドリイシ 170 300 600
ハイマツミドリイシ(共肉) 100 190 500
ハイマツミドリイシ(ポリプ) 140 230 550
トゲスギミドリイシ(共肉) 170 300 600
トゲスギミドリイシ(ポリプ) 100 180 500
ミドリイシその他 130 250 500
フカトゲキクメイシ 100 150 200
キクメイシその他 100 150 200
キャピタタコモンサンゴ 140 200 250
ウスコモンサンゴ 130 180 250
エダコモンサンゴ 100 300 400
コモンサンゴその他 120 230 300
ハナヤサイサンゴ 150 225 400
ヘラジカハナヤサイサンゴ 250 320 430
チリメンハナヤサイサンゴ 280 350 430
その他ハナヤサイサンゴ 230 300 430
シワシコロサンゴ 110 230 350
その他シコロサンゴ 110 230 350
ユビエダハマサンゴ 150 200 250
フカアナハマサンゴ 250 300 350
コブハマサンゴ 400 580 750
その他ハマサンゴ 270 360 450
カタトサカ 200 300 400
その他トサカ系 200 300 400
ショウガサンゴ(深場系) 40 200 600
ショウガサンゴ(浅場系) 40 300 600
その他ショウガサンゴ 40 250 600
スゲミドリイシ 350 600
ストロベリーショートケーキ 300 600
ウスエダミドリイシ 300 600

 

ミドリイシに必要なPAR値

最低PAR値と最高PAR値でずいぶんな開きがあるようです。一応色々なデータを見て最適値と思われるものも記載しました。私の場合は目安として300~350 (μmol m-2s-1)程度を目指すようにしています。

ただ、経験則としてユビミドリイシは350(μmol m-2s-1)を超えて明るくした方が調子がよくなると思います。ユビミドリイシだけは、LEDで焼けてしまったということを経験したことが今までありませんので、私の場合は設置位置を出来るだけ高めに設置するようにしています。

その他のミドリイシは300~350 (μmol m-2s-1)で調整しておくと無難かもしれません。

 

コモンサンゴに必要なPAR値

コモンサンゴはウスコモンサンゴとエダコモン系のサンゴで1.5倍から2倍程度の差があるようです。私の場合はウスコモンサンゴは150~200(μmol m-2s-1)で目指すようにしています。

ただ、実際は位置が空いていなかったりして250overの場所でも成長していたりするので、許容範囲は広いのかもしれません。

エダコモンサンゴグリーンは、とてつもない速度で成長してしまい、場所がなくなったので、上記表上限に近い350~400(μmol m-2s-1)の場所に置いています。これでも焼けることなく問題なく成長していますので、ウスコモンサンゴよりは余裕があるような気がします。

以前同じ場所にウスコモンサンゴを置いていたときは、焼けて白くなっていきました。

 

ハナヤサイサンゴ科に必要なPAR値

ミドリイシよりも若干要求値は低いようです。ハナヤサイサンゴ科には、トゲサンゴやショウガサンゴも含まれています。

私の場合は、ハナヤサイサンゴはミドリイシと同等か若干低めを目指すようにしています。実際にこれらのハナヤサイサンゴ科のサンゴたちは先端が焼けて白くなってしまったりすることがあったので、ミドリイシよりも若干暗めにしておく方が無難だと思われます。

250~300(μmol m-2s-1)程度を目指すようにしています。

 

LPSやソフトコーラルに必要なPAR値

トサカサンゴ系は例外としてミドリイシよりもかなり低めで維持していました。今はクイーンエンゼルに食べつくされるので、水槽にいませんが以前は100~150(μmol m-2s-1)程度で飼育していました。目で見て分かるほどミドリイシと比較して暗い光でした。それらでも問題なく成長していました。

トサカについては、ミドリイシと同等の光を当ててみたところ、明るすぎたようで縮んでいました。ハナヤサイサンゴ科と同等程度の光が良いような気がしています。

 

まとめ

最近の高性能LEDをうまく使いこなして、サンゴにとって快適な水槽を作るためには各種サンゴが必要な光の量を知る必要があります。サンゴを買い足したりした場合に、どの程度の位置にサンゴを置くべきかを判断するためにはサンゴが必要な光合成量のデータが必要です。

PARメーターがない時は、感覚に頼るしかありませんでしたが、今はPARメーターで測定しながら調整しています。絶対値も参考にはなるのですが、PARという基準を得たことで、目で見た明るさだけではなく、数値で加減を調整できるようになったことが非常に大きいです。

LEDの設定は、文献データに近い値になるように最初に設定して、後はサンゴの調子に合わせて調整をかけるのがベターだと思われます。

サンゴの種類によって要求値が違うので、複数の種類のサンゴを飼育している場合は高さで調整するか、弱めに照明を設定して、スポット球を追加するかの2択になると思います。

私が思うPARの要求量の強さ順は以下の通りです。

ユビミドリイシ > ミドリイシ > ハナヤサイサンゴ科 = トサカ > コモンサンゴ系 > その他LPS、ソフトコーラル

PARメーターが国内で購入するとかなり高いので、海外に行った際に購入するか、誰かから借りたり、共同購入するのが良いのかなと思いました。