【飼育記録】【解説】クエン酸によるpH調整時の失敗談

はじめに

PasyaPasya
今回は失敗談を書きました。

うちの淡水水槽は淡水アクアリウムの設計思想でも説明した通り、リン酸の除去に鉄釘を使っています。

淡水アクアの設備紹介

鉄釘を使ったリン酸の除去は海水アクアリウムでは利用している方がおられるのですが、淡水アクアリウムではあまりみかけないので同じことをやってみました。

鉄釘によるリン酸除去自体は特に問題なく機能していたのですが、それに加えてクエン酸を使ってpH調整を行った際に不具合が発生したため、その報告をします。

クエン酸によるpH調整

日本の水道水は軟水という点では使いやすい水ですが、pHについては弱アルカリ性であることが多く、水草水槽に向いたpHである弱酸性ではありません。

ソイルを使えば弱酸性に出来ますが、うちは吹き上げ式を使うため田砂を使用しています。

そのため、立ち上げしてすぐの場合は水道水と同じpHになっていました。そこで弱酸性にするためにpH調整を行おうとしました。

その際に使用したのがクエン酸試薬です。薬局などで普通に売っていますし、アマゾンでも買うことが出来ます。

クエン酸自体は調べてみると魚には害がなさそうだったし、実際に使ってみても魚に害はなさそうでしたが、思いもよらない現象が発生しました。

クエン酸の思わぬ副作用

クエン酸を投入したところ2日後に黒ひげ苔が大発生しました。

発生当初は全く理解不能の現象で、原因が分からずクエン酸に何かよくない成分が入っているのかと思ったのですが、そこそこ純度の高い試薬であり、多分違うところに原因があるのではと推測しました。

ク溶性

ク溶性という言葉があります。

植物育成しておられる方ならご存知だと思いますが、クエン酸2%水溶液に溶ける性質を指し、主に実際の土壌でリン酸成分が肥料からどの程度溶けるかの指標となっています。

つまり、今回の現象は鉄イオンとリン酸の化合物がクエン酸によって溶け出して、つまりク溶性によってリン酸が黒ひげ苔の肥料となった可能性が高いと推測しています。

どのようなメカニズムで黒ひげ苔が増加したか

鉄釘由来の鉄イオンとリン酸が反応すると水に溶けないリン酸化合物が出来上がります。

このリン酸化合物は難溶性のため、相当な強酸または強アルカリ性にしないと元のイオンには解離しません。

だから、鉄釘を使ってリン酸を除去しようと考えたわけなのですが・・・

そこで疑問になるのが、クエン酸は飽和水溶液にすればpH2.0程度の強酸性を示しますが、今回の水溶液はpH調整用に少しクエン酸を入れただけなので、pHは6.5程度で強酸性ではありません。

ということは、pHが下がったことが原因ではないと推測しました。

pHではないということで、他に原因があります。ただし、黒ひげ苔は単純な生物なので、リン酸が増えたことが原因だろうというところは軸のまま他の要因でリン酸が増加しないかを調べました。

その結果分かったのは、クエン酸がリン酸化合物とキレートを作って再度水に溶け出すということです。

クエン酸のヒドロキシ基が鉄に配位して再度水に溶けるようになるようです。

水に溶けていない物質は水草もコケも積極的に利用できないため、不溶性にすることが鉄釘装置の重要な点なのですが、キレートを作ることで再度コケが利用できる形態に変化してしまいます。

それ以外の可能性では、クエン酸は鉄釘から溶け出した鉄イオンと結合してリン酸の吸収作用を抑制した可能性もあります。

どちらかというと、鉄イオン単体の方がリン酸鉄化合物よりもキレートを作りやすいだろうし、リン酸の吸収作用の阻害作用の方が優先して起きているだろうとは考えられます。

どちらの寄与率が高いかは分からないのですが、やはり鉄釘によるリン酸の除去作用をクエン酸によって弱めてしまった可能性が高いと考えています。

まとめ

結論としては、鉄釘でリン酸除去している場合のクエン酸の投入はリン酸鉄化合物とクエン酸のキレート作成により、リン酸の再溶出またはリン酸除去能力の減退によりバランスの崩壊を招きかねないということが分かりました。

また、クエン酸以外でも腐植酸などでも同じことが起きそうなので、注意が必要です。

流木などに優先して黒ひげ苔が生えてくるのは、そのような作用が効いていたりするのかもしれないです。

また、クエン酸によってpH調整を行った水を入れても魚には影響は見られませんでした。

長期間運用したわけではないので、長期の影響は分からないですが2回クエン酸水で水替えを行った限りでは私の環境では魚への影響は見られませんでした。