水槽再スタート
1年半程前に引っ越しをした我が家。
その時に大事な水槽も移管したいと考え、専門の業者さんを探して水槽を引っ越しさせましたが、引っ越しによる水槽のダメージはかなり大きかったのが現実でした。
また、慣れない環境での新しい生活の中で、今までと同じだけの時間と労力を水槽に注ぐのは難しく、現状維持が精いっぱい。あまり水槽の状態は完璧とは言えない状況でしたが、大きな改善も出来ずに今まで過ごしてきました。
だけどやっぱりアクアリウムが好きで、大切に思っている私達。
「もう一度、美しい水槽を取り戻そう。後悔したくない。」と、再スタートすることを決意しました。
珊瑚がキラキラ輝いて、美しい魚達が悠々と泳ぐ水槽を取り戻すため、もう一度一から頑張ります。
ブログにもたくさん記していきたいと思いますので、応援どうぞよろしくお願いします!
現在の水槽の状況
まずは現状確認から。
水槽の現在の状態を知り、必要な作業は何かを知ることはとても大切です。
リン酸塩の値
一番恐ろしいリン酸塩の値をまずは見てみましょう。
計測にはHANNAのマリンチェッカーを使っています。
結果は「2.5ppm点滅」状態。
これは「リン酸塩の量が2.5ppm以上で測定不能ですよ」ということを表しています。
引っ越し前の絶好調だった時には0.05ppmくらいで保っていたので、それと比べると絶句しそうな値ですが、一旦冷静になりましょう。
「2.5ppm以上」でははっきりした値がわからないので、精製水で海水を2倍に希釈し、もう一度測ってみたところ「1.82ppm」という数値が出ました。ということは単純計算すると3.64ppmが正しい数値となります。
これは添加材や掃除だけではどうにもならない数値なので、兎にも角にも水替えが必須となりそうです。
お魚たちの様子
だいぶ数が減ってしまいましたが、お魚たちは今のところ活発に泳いでいます。
白点病のような病気症状は無し。
水替え等のスパンが開いてしまったので、汚れが増えすぎない様餌の量を減らしていましたが、その影響か大きい魚のお腹がぺったんこになっていることに気づきました。
もう少し餌の量を増やさなければと反省。水質の維持とお魚の健康維持の両立は難しいですね。
また、我が家自慢の美しいクイーンエンゼルの体の色がどことなく黄色い…。もともと黄色と青の体色なので黄色はおかしな色ではありませんが、青味が減っているように感じました。そういえばどこかで「クイーンエンゼルの体色は水質で変化する」という情報を目にしたことがあります。だいぶ水質は悪くなっているのかもしれません。
水槽周りの設備を確認
サンプの中の設備達は今までとにかく現状維持していただけだったので、かなり汚れているものが多かったです。
スキマーや殺菌灯などのポンプ類で外せるものは定期的に綺麗に洗った方が、ポンプの稼働効率が良くなるので、洗うことにします。また、ポンプが入っていたサンプの底部分にかなりの汚れやゴミが溜まっていました。これは物理フィルターの能力が足りていない証拠。物理フィルターの能力が十分だとサンプが汚れることはないそうです。物理フィルターの能力を上げる工夫はこれから考えないといけませんが、一旦水を抜いた際にサンプ底面は綺麗にしようと思います。
リアクター類はバイオペレットを入れたものだけを稼働していましたが、水槽内の様子から見ても、これだけでリン酸を下げ止めるのは難しそうだったので、リン酸吸着剤を入れたものを追加することにしました。
リン酸塩が多いとどうしてだめなの?
水槽の水の中には様々な物質が溶け込んでいますが、中でもリン酸塩はできるだけ少ないに越したことはありません。実際に自然界ではリンは海水中にほとんど存在せず、常にリンは不足しているような状態だと言います。飼育水槽ではお魚に与える餌や、水槽内に溜まる汚れなどから溶け出すことで水槽内に蓄積されていきます。
サンゴに与える影響
リンはカルシウムととても結合しやすいという性質を持ちます。
ご存じの通り、サンゴは炭酸カルシウムを利用して骨格を形成しますが、ここにリンが結合してしまうことで珊瑚の石灰化が阻害され骨格の形成が上手くいかず、成長が妨げられてしまうのです。その為、水質の良くない(特にリン酸塩が多い)環境で育ったサンゴは成長も遅く、骨格が上手く作られないためボロボロと崩れやすい状態になります。成長が妨げられ続けるとサンゴは自然と弱っていき、共肉が剥がれ落ちていってしまいます。
また、リンは藻類や苔類の栄養素となるため、リンが多い環境だと栄養過多の状態になり苔や藻類がたくさん繁殖します。これがサンゴを覆ってしまったり、影を作ってしまうことによってサンゴの光合成が妨げられることで成長が阻害されることもあります。
生体(主に魚)に与える影響
前項を見て頂いたらお分かりいただけるように、リン酸塩が多くてもお魚はある程度までは耐えられます。ただ、水槽内の成分のバランスが崩れてしまっていることになるので、体色が落ちたり、病気になりやすかったりするなどのリスクを常に背負うことになります。
リンは魚にとっても、サンゴにとっても一定程度は成長に必要な物質ではありますが、ほんの少しあれば十分。どちらかと言えば多すぎた時の悪影響が大きい物質です。その為、常に余ってしまったリン酸塩を減らしていくシステムを水槽内に組み込んでいく必要があるのです。
水替えによるリン酸値の変化予測
こちらは夫が「水替えをした際にどの程度リン酸が減るのか」を単純計算してくれたものです。
我が家の場合、水槽が150×60×60なので、水槽内の水量は約500Lとなります。
下記表は水槽水量500Lとして計算しています。
水替えの際にどの程度水を入れ替えるのかというのは、それぞれのアクアリストさんによって異なるかと思いますが、我が家の場合リン酸塩の値はかなり高い為、できる限り水を抜いて入れ替えることにします。
何度か水替えをしてわかったことは、我が家の場合、水槽内やサンプ内の水を限界まで抜いたとしても、擬岩の中や各種リアクター内に残る水の総量がおよそ100Lくらいあること。つまり、限界まで水を抜いて海水を入れ替えた時のリン酸塩値は理想値で約5分の1まで減少することになります。
実際のリン酸値の推移
前項の表を参考にすると、我が家の本水槽及びサンプの水を限界まで抜いた時の残水量は100Lなので、一度の水替えで約5分の1までリン酸塩を減らすことができると予測できます。
これを踏まえて、実際の結果はどうだったのか見てみましょう。
水替えの日程間隔は約2~3日に1回のペースです。この間、以前よりも餌の量を増やしたり(お魚のお腹がぺったんこになっていた為)、ガラス壁面の苔掃除や擬岩の掃除なども行っていたので、次の水を貯めるまでの2~3日の間にリン酸が増えてしまっていましたが、水替えをすればリン酸値が約4分の1に減少していることが、グラフを見て頂けるとわかると思います。
理想値では約5分の1に減少するはずでしたが、実際には水槽内に残った苔についた汚れや水槽内のデトリタスの残りから溶け出した分、もともと残っていた残水100Lから溶けだした分のリン酸がある為、水替え後のリン酸塩の減少度合いは元の値から約4分の1に留まるという結果になりました。
また、人工海水に含まれるリン酸量も0ではないため、水替えだけでリン酸値を0ppmまで持っていくことは不可能に近いです。その為、水槽内の値が大きく超過している場合は水替えの効果は大きいですが、微々たるリン酸を水替えで無くしてしまうことはできません。水替えだけで対応しようとせず、別の方法で安定して余剰分のリン酸塩を減らしていく方法を模索し実行する必要があることも、覚えておかなくてはなりません。
まとめ
結局我が家では水槽内の水をできる限り抜く最大量の水替えを計5回行い、やっとサンゴたちが生きることができる水質域までもっていくことができました。
ですが、これは水槽復活に向けての小さな1歩でしかなく、やっとスタート地点に立てたといっても過言ではありません。これからこの水質を維持する方法も考えていかなければなりませんし、物理フィルターの能力不足や水流の改善、光の調整などなど課題は山積みですが、ひとつずつ問題をクリアできていければと思っています。
今回は5回の水替えを短期間で行うことで、飼育水中に含まれるリン酸塩を効率的に減らすことができましたが、たくさんの時間とお金、体力を使いました。
でもそのおかげで、我が家の水槽から水を抜いた時の残水量であったり、リン酸値がどのように変化するのかという事実に基づいた貴重なデータが取れたことは、今後のアクアリストとしての経験の中で大きな財産になったと思います。
お使いの設備によっても異なるかと思いますので、全く同じような結果となるかはわかりませんが、今回取れたデータが少しでも皆さんの助けとなればと思います。
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