はじめに。何故カルキを抜かないといけないのか?
水道水に入っているカルキの元は次亜塩素酸ナトリウムという物質です。この次亜塩素酸ナトリウムを水に溶かすと以下のような反応が起き、次亜塩素酸というHOClという物質ができます。この物質が殺菌効果があるわけですね。
NaOCl + H2O ⇔ HOCl + NaOH
この次亜塩素酸は物質を酸化させる性質を持っています。この性質を持った物質を酸化剤といいます。酸化はよくないというイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
この次亜塩素酸ナトリウムから発生した次亜塩素酸が魚に悪影響を与えます。魚にどのような影響を与えるかについては以下の論文に詳しく結果が記載されています。一言でいうとカルキが残った水に入れたお魚達は☆になってしまいます。
青井透 淡水魚に対する残留塩素の連続通水による毒性試験 衛生工学シンポジウム論文集, 6, 71-76
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/7324/1/6-2-9_p71-76.pdf
カルキ抜きの成分は?何故ハイポと呼ぶのか?
カルキ抜きの成分はチオ硫酸ナトリウムという化学物質になります。化学物質というと体に悪いイメージがありますが、世の中の物質は全て化学物質なので安心してください。塩もNaClと書けば化学物質に思えるのと同じです。
この「チオ硫酸ナトリウム」をハイポと呼ぶ理由は、過去に「チオ硫酸ナトリウム」を「次亜硫酸ナトリウム」と間違われていた時代がありました。その「次亜硫酸ナトリウム」の英名がsodium hyposulfiteだったことに起因します。この略称が広まってハイポと呼ばれています。
どういう理由でカルキを抜けるのか?
魚が死ぬのは当然困るため、これを中和するためにカルキ抜き(チオ硫酸ナトリウム)を入れます。
そうすると、以下のような反応が起きます。
Na2S2O3 + 4HOCl + H2O ⇔ 2NaCl + 2H2SO4 + 2HCl
カルキ抜きは還元剤といい、逆に酸化されやすい性質を持っているため、還元されてしまいます。しかし魚達の代わりに酸化されてくれます。これにより、カルキ(次亜塩素酸)がカルキ抜き(チオ硫酸ナトリウム)によって無害化されるというわけですね。
もっと詳しく知りたい方は以下のページを参考にしてみてください。反応機構を立体構造を使って説明してくれており、大変深く理解することができると思います。
日々の雑記帳 チオ硫酸ナトリウムでカルキが抜ける理由
どのカルキ抜きがよいのか?
説明したような反応が起きればカルキは無害化されます。ということは、チオ硫酸ナトリウムが入っていれば反応は起きますので大体はどのカルキ抜き剤でもカルキ抜きとしての能力には違いがありません。
カルキ抜きの方法
- 水替えの量を決め、バケツに水道水を貯めます。
- 規定容量のカルキ抜きを水道水に入れます。
- 10秒ほど混ぜます。
上記の反応は反応時間が早いので、10秒ほど混ぜたらほぼカルキは消えているでしょう。カルキ抜きさえ持っていれば、方法はすごく簡単です。
入れすぎたらどうなるのか?
これは調べてみたところ、千葉県の水道局が調べてくれていました。この事例の場合は、通常の50倍のカルキ抜きを入れていたようです。過剰に入れたカルキ抜きから発生した硫黄が水中の酸素を奪ってしまったようですね。通常こういう薬剤は考えられて選ばれており若干のマージンはあることが多いですが、規定容量を守ることが重要です。
もしあまりに入れすぎていたら、新しい水道水に規定容量のカルキ抜きを入れて水替えをしてあげましょう。一気に全部の水を入れ替えると、それはそれで魚に影響を与えてしまいますので状況次第にはなりますが1/3ほどの水替えが安全と言われています。水温は合わせてあげるとより安全です。いきなり冷たいシャワーを浴びせられると人間でもショックを受けるのと同じ理由です。
イオウ分が遊離したため臭いを出し、またイオウ分は水中の酸素を消費するとともに、ミネラル分等と反応して白い濁りを生じさせた
千葉県水道局 観賞魚等の飼育について
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