【海水・淡水】アクアリウム初心者の方が後悔せずに水槽を立ち上げるまでの覚書

はじめに

PasyaPasya

このサイトを始めようと思ったキッカケは、2つあって

1つ目はアクアリウムに関する情報交換が出来ればと思ったこと

2つ目はアクアリウム仲間が出来ればと思ったためです。

その中で思ったのは海水アクアリウムを始めようという方が少ないということを感じていました。

こういうこともあって、淡水・海水含めてアクアリウムの始め方というのを記載してみようと考えました。通り一遍の教科書的な資料はネットで出てくるので、実体験に基づいた実践的な内容を記載してみようと思っています。

海水と淡水どちらがよいか

結論としては好きな方を選んだ方が良いと思います。

ただし、設備投資が海水水槽の方が10000〜20000円多くかかります。

色々なところで書かれているのが、海水水槽の方が難しいということです。これが海水水槽を始める人が少ない理由だと思うのですが、私の意見としては、海水水槽でも淡水水槽でも難易度は変わらないというのが両方の水槽を持った感想です。

それぞれ少しずつ違いがあるので、その点を以下に示してみました。

  • 病気に対する強さは、淡水魚より、海水魚の方が強いです。海水魚は病気になっても治ることが多いです。
    海水魚の病気の80%は白点病だとよく言われるが私の場合は100%白点病(ウーディニウムはあるかも)のみが発生しています。
    海水魚の白点病はちゃんと治療すれば治ることの方がほとんどなのですが、淡水魚は一旦調子を崩すと経験的に70~80%は助けることができないです。
    これは何故かというと、魚の大きさが全然違うためだと思っています。海水魚の方が体型が大きく立派です。
  • 維持の楽さは、設備次第だが海水水槽の方が楽です。設備を省略して水槽とフィルターだけを置くなら淡水水槽の方が楽です。ここは大きな誤解があるように思います。
    一括りに海水水槽といってしまうと誤解があるのですが、SPS(ミドリイシ等)を飼育しない限り、プロテインスキマーがあれば相当期間水換えなしで水槽が維持できます。スキマー無しの場合は、淡水水槽の方が楽です。
    この場合の維持は水換えに頼るため淡水は水道の水を入れ替えればよいのですが、海水水槽は塩を入れなければいけないからです。
    また水草はすぐに成長してしまうのが、実は厄介だったりします。
    水草は環境を整えれば整えるほど成長してキレイになるのですが、水槽の大きさが有限であり、あっという間に水草が空間を埋め尽くしてしまいます。
  • 設備投資を安くできるのは淡水水槽です。
    海水水槽は淡水の設備に追加してプロテインスキマーの費用がかかります。
    スキマーなしでも維持できますが、水換えの頻度が増えるし、海水水槽の発展した飼育技術の恩恵を受けるにはスキマーはほぼ必須と思った方がいいと思います。
    ただし、昔ほどスキマーは高くないから確実にスキマーの効果を出すなら淡水の設備投資にプラスして20000円程度(新品をお店で買った場合)の追加の出費がかかると考えればよいと思います。
    20000円の差は大きいのですが、これの有無によって維持性は大きく変わります。オークションや海外から買うことで20000円を10000円にすることはできます。
  • 生体の種類は、海水と淡水で大きな差がないと思います。両方ともマイナーな種類まで入れると相当数の種類がいるため、好みの問題になると思います。
  • アーティスティックな水槽を作れるのは淡水水槽です。
    業界の影響もあると思うが、なんだこれ!というような水槽は淡水水槽の方が作りやすいです。
    淡水水槽を彩る流木や石が錯覚を作るのに用いやすく、水槽の広がりを作りやすいです。
    色彩の豊かさという点を見れば海水水槽の方がバリエーションがあります。色々な色のサンゴがいるためです。
  • ずっと一緒に魚達といられるのは、一般的には海水水槽です。これは何故かというと、実は海水魚は10年以上生きるものが多く、サンゴに至っては人間より寿命が長いためです。
    犬とか猫みたいにに長生きしてくれます。淡水水槽でも長生きの魚はいるが、10年以上生きるのはコリドラスや大型魚に種類が制限されます。

具体的な設備内容

海水アクアリウム

  1. 水槽・・・大きい方が安定させやすいですが、実は30cm水槽でも問題ありません。私の場合スペースの問題で30cm水槽で初めて海水魚を飼い始めたのですが、問題なく飼い始めることができました。
    本当の海のように魚が乱舞しながら泳がせたかたい場合は大きい水槽でないと厳しいですが、カクレクマノミや小型ヤッコ、イエローヘッドジョーなどは30cm水槽でも飼育することができます。
    また、オーバーフロー水槽は海水アクアリウムではメリットは大きいのですが、無くても問題なく飼うことができます。
  2. ろ過装置・・・この装置は必須です。オーバーフロー以外に外部フィルター、外掛け式が選択できます。
    上部式はやったことがないですが、上部をやるなら照明がつけにくいので、私は外掛けでいいと思います。
  3. ろ材・・・ろ材も必須です。ここでいうろ材は生物濾過用のろ材を指しています。
    ろ材なしという選択が海水水槽ではありえるのですが、上級者向けのなので、慣れてからろ材を抜けばいいと思います。
    エーハイムサブストラットプロ、モノボールが私の水槽では実績があります。
    プロテインスキマーを入れる場合は物理ろ過もプロテインスキマーに任せることができるので、一旦セットしたろ材を触る必要はなくなります。
  4. プロテインスキマー・・・必須ではないですが、海水の発達した飼育技術を利用するなら必須です。
    海水水槽の飼育技術はプロテインスキマーを前提としたものが多く、これがないとBP(バクテリオプランクトン)システムも構築できません。
  5. クーラー・・・なしで飼育している人もいるが、ほぼ必須と思います。
    コンプレッサー式でなくてもよいので、ファンタイプでも25℃に維持できるものがあるため、そちらでも問題ありません。
    コンプレッサー式は高いですが、水を蒸発させないため比重を変化させない特徴があります。
    ファン式は安いのですが水の気化熱を利用しているため、冷却時に水が蒸発し、塩の濃度(比重)を変化させてしまいます。
    手間を優先するならコンプレッサーを選び、コストを優先するならファンタイプを選ぶとよいです。音についてはコンプレッサーの方が私は気になりません。
  6. 殺菌灯・・・なくても可能ですが、値段以外はあって悪いことはありません。
  7. 照明・・・サンゴを飼うなら必須です。初心者の人なら現在の日本での品ぞろえを考えると、LEDが無難です。
    生体の成長のみ考えると、T5という選択肢もあるのですが、LEDは電力効率が良く、原理的に波長が選べるのと、市場的にLED推しなのでそちらの方がよいという理由です。
    ただし、LEDはピンキリなので、どんな波長がどの程度出ているかは確認した方がよいと思います。
    目安となる指標は30cm水槽なら60°の照射角で20Wあれば、問題なくソフトコーラル、LPSは飼育できると思います。
    ただし、これも波長・照射角にもよるため、一概には言えないのですが、目安にはなると思います。
    また強ければ強いほどよいわけではなく、強光障害を起こすため、適正な出力の照明を選ぶことが大切です。
  8. 人工海水・・・天然海水を買わないのであれば必須です。
    海が近くにあって自分で汲む人以外は人工海水の方がコストが安いと思います。
    人工海水で私が使ったことがあるのはインスタントオーシャン、コーラルプロソルト、レッドシーオーシャンの3つですが、どれも問題が起きたことはありません。
人工海水の成分表

1.023worldさんのページにて、人工海水を分析した結果が記載されています

淡水アクアリウム

  1. 水槽・・・30cm水槽でも問題なく飼育できます。
    アロワナなどの大型魚は無理ですが、ディスカスなどは飼育できると思います。当然こちらも乱舞させたければ、水槽の大きさの制限は受けてしまいます。
  2. ろ過装置・・・何らかのフィルターは必須です。外部フィルターがよいと言われることが多いですが、外掛け式でも問題なく飼育できます。
    外部フィルターが淡水水槽で良いと言われる理由とは二酸化炭素を添加した場合に、溶け込んだ二酸化炭素がろ過装置部で外部に抜け出さないためです。
    なので、二酸化炭素を入れない場合はどんなろ過装置でも問題ありません。
    後述しますが、二酸化炭素は入れない方が楽に飼育できると思います。
  3. ろ材・・・生物濾過用のろ材は必須。活性炭などの化学ろ材は不要と思います。物理ろ材をどうするかですが、淡水ではプロテインスキマーは使用できないので、デトリタスが溜まります。
    これを物理ろ材で取り除くことは吹上式にするとか結構特殊なことをやらないと実現できないため、私は物理ろ材は不要と考えています。
    溜まる前にプロホースで吸い出して取り除くのが最も効果的で現実的です。
  4. 二酸化炭素添加・・・あれば水草の成長が早くなりますが、照明がキッチリしていれば、なくても成長します。
    水草(全てではない)の成長はかなり早いので、成長を遅くするためにもなくてよいと思います。水泡を見たいとか、色を揚げたい(特に赤色)という場合はあった方がよい場合もあります。
  5. クーラー・・・なしでも飼育している人もいますが、ほぼ必須です。
  6. 殺菌灯・・・なしでも問題ありません。
  7. 照明・・・サンゴと違って、波長まで気にする必要はありません。
    厳密にいうと波長まで気にした方が成長スピードは速いと思いますが、光量があれば問題ないです。
    LEDでも蛍光灯でもどちらでも成長します。というか、最近はLEDの方がLED設計者の方が素子を選ぶだけで波長選択できるので、PPFDも上げやすく高性能と言えるかもしれません。
    維持まで考えた時に最も手間がかかるのが水草のカットなので、むしろ枯らさずに成長もさせない照明が出ればいいのですが…

立ち上げの方法

色々なサイトに水槽立ち上げの方法が書いてあるので、ここでは如何に早く立ち上げるかという切り口で記載します。

水槽の立ち上げとは、バクテリアを飼うということに他ならないのでどうやってバクテリアを早く増やすかということについて記載しました。

  • バクテリアが増えるイメージ・・・細胞分裂して増えるので、いわゆるネズミ算式に増えます。ただし、細菌の中では硝化細菌は増える速度が遅いため、これを早くするためにはどうすればよいかということになります。

私がいつも早く立ち上げるために行っている方法は生体を入れずに直接アンモニアを投入して立ち上げる方法です。淡水なら1週間、海水なら2週間あれば今のところ、魚が入ってからアンモニアや亜硝酸が検出されたことはありません。

バクテリアが増える速度に影響を与える因子

  1. 種菌・・・最初が10匹であるのと、1000匹であるのでは増えるまでの時間が変わってきます。よって、できるだけ沢山最初に投入した方が早く立ち上げることになります。私はべっぴん珊瑚の土壌バクテリアを使っています。これを大量投入します。
  2. 温度・・・これは私が見た論文を読む限り、30~35℃あたりが最もよく増えるようです。よって、早くバクテリアを増やすにはヒーターを投入して一時的に温度を30~35℃の間にすれば早く増えます。
  3. pH・・・海水でも淡水でも基本的にpHは投入した新しい水のpHに支配されるので、コントロールはできないのですが、アクアリウムのpH範囲内では各々のpHに対応した菌種が増殖するため問題ありません。
  4. 溶存酸素量・・・これは最低限量があれば、それ以上投入しても効果がありません。測定したことがないので、正確なデータはないですがエアレーションをかけていれば、問題ないと思われます。
  5. 窒素源・・・これも最低限量があれば、それ以上投入しても効果がありません。むしろ、その分NO3が余分に生成されてしまうので、後処理に困るため試薬で最も量が多くなる寸前くらいで止めておけばよいと思います。

つまり、種菌をたくさん入れて、一時的に温度を上げるのが非常に重要になってきます。

いつ生体を投入するかの判断ポイント

試薬が必要です。アンモニア、亜硝酸、硝酸の3種類があればよいですが、最低限硝酸の試薬があれば投入時期の判断は可能です。

これはとても簡単で、硝酸が出来上がってきたら生物ろ過が立ち上がりつつあるという判断をします。私の場合は、硝酸が出始めてから2~3日後に生体を入れています。

生体投入時の方法

  • 魚・・・温度合わせ→水合わせをしていれます。水合わせの方法は点滴法がいいと思います。
  • サンゴ・・・所説あるのですが、私はいきなり水槽にドボンします。これはサンゴは魚と違って高度な循環機能を持っていないから問題ないと思っているためです。
    ただし、水槽に入れる前に薬浴はしています。ミドリイシの場合はヨウ素による殺菌を行い、ソフトコーラルとLPSの場合は変な生き物を薬浴にて取り除きます。
    後重要なのが、目視による駆除です。カニやウミウシなどおかしな生き物の大部分は目視でよく観察することで取り除けたり、侵入を防げるので、目視で駆除します。
  • 水草・・・「水草その前に」を使って変な害虫などが入らないようにしてから投入しています。入れたくない生き物は巻貝などですね。
  • ライブロック・・・キュアリングをしてから入れますが、最も重要なのはエアレーションをすることではなくて、有害な生物を取り除くことなので目視でしっかり外観を確認することが大事です。あとは臭いをかいで変なにおいがしたら捨てる。変なにおいというのは、明らかに腐っている臭いです。
  • 流木・・・あく抜きをしてから入れます。私の場合は炭酸ナトリウムにつけて、しっかり水洗いしてからクエン酸であく抜きしてから入れています。炭酸ナトリウムとクエン酸は反応するので、しっかりと水洗いします。
  • 石・・・しっかり洗ってから、あく抜きしていれます。こちらは高温のお湯につけるのみで投入しています。

まとめ

実際に魚を飼育するまでの手順についてまとめてみました。何かの参考になれば幸いです。

  1. 海水か淡水か決める・・・今までの経験から直感で決めればよいと思います
  2. 自分が好きな生体を調べる・・・一番楽しくワクワクする瞬間です。
  3. 設備を決める・・・生体に合わせて決めます。これもワクワクします。
  4. 実際に購入する・・・在庫等を調べておくとよいです。常に在庫があるわけではありません。
  5. 設備を設置して、立ち上げを始める・・・我慢の時
  6. 生体を投入する・・・投入後は毎日観察し、異変がないかを確認します。
  7. 水質を測定する・・・できればアンモニア、亜硝酸は1週間くらいは毎日確認した方がよいと思います。