海水アクアリウムの基礎設計について


はじめに

今回は我が家の海水アクアリウムの基礎設計についての説明です。

目指したい水槽

誰でも一度は考えることだと思いますが、南国の海のような沢山の魚やSPS LPS ソフトコーラルが混在しているような海を目指します。そのため、これらの海水魚サンゴが一緒に住める水槽とは何かという視点で基礎設計を行いました。

上記をどのようにして実現するか

このような環境で生体数を増やそうというのは、過去の先人達の知識や経験から難易度が高いのは目に見えています。

自然界よりも圧倒的に生体数に対する水量が少ないのも分かっているため、何か工夫が必要だと考えました。

よって自然を再現するナチュラルシステムが現在の海水アクアリウムのトレンドだとは思いますが、その逆の科学技術満載のプラント型水槽を目指すこととしました。

具体的には外部フィルター、大過剰なプロテインスキマーを使って一般的な濾過よりは明らかに過剰な設備を設置します。過剰なプロテインスキマーで失われる元素は添加剤を使って対応する予定です。

また、少ない空間で海水しかない空間を作っても強い魚が縄張りを主張してしまい空間が無駄になってしまうことから、空間を有効活用するためにライブロックも過剰なレベルで投入し、入り組んだ岩礁を再現することで対応します。

基本的にはこのような考え方で豊かな生体を維持しようとしました。

鍵となる濾過設備であるプロテインスキマー

今回の海水アクアリウムで鍵となる設備がプロテインスキマーです。個人的にはプロテインスキマーは海水アクアリウムに大きなブレークスルーをもたらした画期的な設備だと思います。

以下に生体数と発生する必要なろ過量のグラフを示しました。

硝酸塩(NO3-)を例に取ると、生体数が増えるに従って、排出量は増えます。この時に濾過の許容量が青色のゾーンにいれば、水槽は安定して維持できます。

逆にオレンジなら、水槽は安定しません。ここで、硝酸塩(NO3-)は魚が直接出すものや糞や残餌がバクテリアによって変化したものなので、変化する前に取り除ければグラフの傾きが抑制できることになります。

ライブロックや底砂による還元は単純に縦軸の濾過量を変化させるですが、プロテインスキマーは数々の汚染を大元の段階で物理的に除去出来るため、傾きを抑制できます。

ここから、外部フィルター(魚にとって猛毒のアンモニアや亜硝酸を早急に除去するため)とプロテインスキマーを併用すると安定した濾過システムが作れるのではないかと考えました。

要は青のゾーンをプロテインスキマーで広くして、外部フィルターでアンモニアや亜硝酸濾過能力を青ゾーン上側まであげることで、確実に毒素を変化させていこうという考え方です。

ろ材を抜いたナチュラルシステムでは、プロテインスキマーによる傾きの抑制は出来ていますが、縦軸の濾過能力を上げる濾過装置がライブロックのみなので、飼える生体数は少なくなります。

そのためにそのキーとなるプロテインスキマーは過剰なものを採用しました。バイオペレットを使えば、リン酸塩や硝酸塩も除去出来る最強の濾過装置として機能してくれると思います。

空間の有効活用

次に問題となるのが海水魚の縄張り問題です。海水魚は縄張りを主張する種類が非常に多く、この解決が必要になります。

体積は水槽を選んだ時点で決まってしまうので、如何に見かけ上広く見せるかが重要になってきます。これには擬岩を使って複雑な経路を作ることで対応することとしました。複雑に入り組んだ構造であれば、縄張り争いを緩和することができます。ヒートシンクのように表面積を広げるイメージです。

また、小さな部屋を複数作ってあげることで、そこを寝床として縄張りとしてくれるのではないかと考えました。

これにより小競り合いはあっても、それぞれの魚が安全な場所を見つけ大きなケンカはなく過ごせています。

まとめ

一般的な基準よりも大過剰なプロテインスキマーによる弊害は微量元素の除去による長期安定性が課題なのですが、ミドリイシがいるとどっちにしろカルシウムやKH、ストロンチウムなどは使われてしまってバランスが崩れるので大きな問題にならないと考えています。

実際に運用してみてわかるのは、魚もサンゴもとても元気であるということと、汚れの取れ方が水量のわりに半端ないということです。

もし、スキマーで除去していなかったら水槽に溜まっていくのだとすると、そちらの方が微量元素の影響よりも大きい気がします。よく言われるオールドタンクシンドロームという現象ですね。

少なくとも微量元素は添加剤で補充できるので、大きな問題にはならなさそうです。