はじめに
DI水、RO水の違いについて説明していきます。この記事では、RO水が良い、悪いという記載ではなく、言葉の定義とどのような方法で作られているのか、作られた水はどのような特徴を持っているのかについて主に説明していきます。
RO水について
RO水とは逆浸透膜を通した水のことです。英語では、「Reverse Osmosis Membrane」と書きます。この頭文字をとったものがRO水です。
逆浸透膜はこの写真のような構造になっています。
どうやって不純物を取り除くのか?
逆浸透膜と書くとすごく難しく感じますが、簡単に説明するとものすごく目の細かいザルです。目の細かさは水分子の大きさの数倍程度です。分かりやすく1nm程度と考えても大きな間違いはありません。厳密には、製品の種類によっても違うでしょうし、アクアリウムであれば、1nmの穴が開いているという理解でも問題はないと思います。
もう少し簡単に説明しますね。お米をザルに入れたとして、お米より目の細かいザルを使ったらお米はザルの中に留まっています。それと同じで、水道水に含まれた不純物の方が逆浸透膜の目の細かさ(穴のサイズ)よりも大きいので、逆浸透膜を通り抜けられないということです。すごく単純な原理ですね。
少し専門的なことも書いておきます。水分子の大きさは約0.38nmです。それに対して代表的な不純物であるナトリウムイオンの大きさ(イオン半径)は0.1nm~0.14nmです。あれ、さっきの説明と違うと思われると思うのですが、ナトリウムイオンは水と仲が良く、ほとんどの場合ナトリウムイオンの周りを水分子が護衛のように囲んでいます。そうなると、水に溶けている場合のナトリウムイオンの大きさはナトリウムイオン+水分子複数の大きさとなり、水分子より必ず大きくなります。
だから逆浸透膜の大きさで不純物を取り除けるということになります。
しかし、水分子よりも小さい不純物がないわけではありません。そういったものは逆浸透膜では取り除けません。ゴミや有機物などはまず水分子よりも大きいので、破損がなければ除去することが出来ます。
捨て水が出る理由
もし、捨て水を出さずに逆浸透膜で水をろ過した場合どうなるでしょうか。逆浸透膜の表面には、ナトリウムイオンなどの不純物が溜まっていきます。そうすると、浸透圧という力が働いて水が逆浸透膜を通れなくなります。それではすぐに交換する必要が出てしまうので、捨て水をすることによって、余分な汚れを排出して寿命を延ばしています。
加圧が必要な理由
理解するには浸透圧について理解する必要があります。浸透圧とは、溶媒(今回は水)に溶質(今回はナトリウム)が溶けている濃度の違う2種類の溶液があったとすると、濃度の低い溶液から濃度の高い溶液に溶媒(水)が移動しようとする圧力のことです。
この時、この浸透圧以上の水圧をかけてあげると、濃度の高い溶液から濃度の低い溶液に溶媒が移動します。つまり、加圧してあげることで、ろ過効率を上げることが出来ます。適切な圧力をかけてあげることで、狙い通りに不純物を濃縮した捨て水を出して、長期間使い続けられるろ過であるということになります。
RO水の特徴
上に書いたような仕組みでろ過をするため、若干のイオンの通り抜けやサイズの小さな不純物は除去しきれません。しかし、破損がない限りは有機物などはほぼ除去されていて、大部分のイオンも除去することが出来ます。
精製速度は、目の細かいフィルターでろ過しますので、ずいぶん遅いです。サイズにもよりますが、1時間に200~500リットルの間が家庭用のRO浄水器の精製速度と思われます。
大部分のカルシウムイオン等のミネラル成分を除去することが出来るので、精製された水は軟水になります。
DI水について
DIはDeIonization(脱イオン化)のDe Ionizationの頭文字をとったものです。 イオンを取り除いた水ということになります。イオンを取り除くプロセスを経た水をDI水と呼びます。
家庭用やアクアリウムの場合は、まずイオン交換樹脂を使いますので、DI水はイオン交換樹脂を使った水(イオン交換水)ということをさしている場合がほとんどです。
イオン交換樹脂はこの写真のような粒で触るとグミのような感触です。
どうやって不純物を取り除くのか?
純水を作る場合のイオン交換樹脂は、以下の性質を持ちます。
- ナトリウムイオンなどのプラスのイオン(カチオン)を持つ不純物が来た場合にカチオンを吸着して、その代わりに水素イオン(H+)を放出するという性質
- 硝酸イオンなどのマイナスのイオン(アニオン)を持つ不純物が来た場合にアニオンを吸着して、その代わりに水酸化物イオン(OH–)を放出するという性質
イオン交換樹脂を定期的に交換する必要がある理由
上記のようにイオンを交換して純水を作成するため、交換するイオンが無くなってしまうために定期的な交換が必要です。これらは除去する不純物の量にもよるため、何リットルの水を精製したら交換ということは言い切れません。
例えば、関東などの硬度が高い水道水の場合は軟水地域に比べて交換頻度が早くなります。
DI水の特徴
そのため、硬水(カチオンがたくさん含まれた水)をイオン交換樹脂を使って精製した場合、pHは酸性に傾きます。これは原理的に仕方のないことですが、水道水を使っている場合は顕著にpHが落ちるということはまずありません。
また、有機物などの汚れはイオンではありませんので吸着できず素通りしてしまいます。
イオンを吸着するため導電率はRO水よりも低くなります。
ほとんどのカルシウムイオン等のミネラル成分を除去することが出来るので、精製された水は軟水になります。
まとめ(ROとDIの併用や使い分けについて)
上記に記載したことを表にまとめました。
RO水 | DI水 | |
精製速度 | 遅い | 早い |
不純物除去の方法 | 逆浸透膜によるろ過 | イオン交換樹脂による吸着 |
イオン除去 | 95%程度 | 99%以上 |
供給水の利用効率 | 50%程度 | 99%以上 |
加圧 | 要 | 不要 |
有機物の除去 | 可能 | 不可能 |
定期メンテナンス | 数千リットル毎 | 数百リットル毎 |
逆浸透膜とイオン交換樹脂は併用して使うことが出来ます。併用して作った水をRO/DI水と言います。それぞれを単体で使って精製した水よりも純度が高く純水により近いです。汚れについては有機物を除去し、不要なイオンも除去した水が作れ、イオン交換樹脂の寿命も何十倍にも伸ばすことが出来ます。
しかし、併用するとデメリットも同時に発生します。精製される水の量は逆浸透膜により制限されてしまい、定期的なイオン交換樹脂の交換が必要になります。
単体で使った場合は、RO単体の場合はDI水ほどの導電率の水は作れませんし、DI水単体の場合は高頻度でのイオン交換樹脂の交換が必要になります。
このようなメリットデメリットがあるので、それぞれの環境に合わせて使うのが最も効率が良いでしょう。
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