【ミドリイシ】RTNとSTNの定義の国による違いについて

この記事の概要

ミドリイシ飼育をしている方なら一度は聞いたことがあるRTNというワード。この言葉の定義が国内と海外(EU、北米)では違っていると感じました。

STNについては比較的違いは少ないと思います。

そのため、定義について説明したいと思います。

共通している現象

急速なミドリイシの白化のことをRTNという風に呼んでいます。これは日本、EU圏、北米共に共通しています。

対してゆっくりと白化していくことをSTNという風に呼んでいます。こちらも日本、EU圏、北米共に共通しています。ただ、日本国内でSTNというワードはあまり聞きません。

ミドリイシが急速に白化する原因は一つではありません。国によって違っているのは、急速な白化の原因に対する認識です。

日本でのRTNの定義と対処について

原因

全員ではないと思いますが、日本では細菌(ビブリオ)による白化のことを言っている方多いと感じています。RTNが起きたら他のサンゴにも影響があるかもしれないといわれるのはこのためです。

 

対処方法

上記原因により、RTNが起きているという認識が広く持たれているため急速な白化が起きた場合はすぐに水槽から出す、またはその部分を折って廃棄するということが行われていることが多いです。

EU圏と北米での定義と対処方法について

RTNとSTNは何の頭文字なのか?

RTNは「Rapid Tissue Necrosis」の頭文字をとった略語です。日本語に訳すと「急速な死」となります。対して、STNは「Slow Tissue Necrosis」の略語です。日本語だとゆっくりとした死という風になります。

急速にサンゴが白化した現象のことを指す言葉として、分かりやすい略語になっています。

 

原因

英語圏の略語であり、元の言葉がイメージしやすいのもあると思いますが、原因は一つではないという風な認識が広く持たれています。

そのため、急速な白化が起きたとしても、すぐに水槽からサンゴを出すということはなく原因を探ろうとする人が多いです。

 

対処方法

原因は様々なものが考えられるため、水質測定、思い当たる事項等を検討し、細菌感染が疑われるようであれば、日本と同様に取り出すなどの対処方法がとられます。

ただし、KHの変動などが観測された場合は即座にミドリイシを取り出すなどのことは行いません。水換えや添加剤により水質を狙うべき数値まで修正します。この時、急激に水質を変化させることはさらなる白化を呼ぶことがあるため、数日かけて変更されることが多いです。

 

ミドリイシが白化する原因と適切な対処法について

KHの急速な変動

白化の最も一般的な原因はKHの変動であるといわれています。ミドリイシはKHを消費します。そのため、何も添加(水換えを含む)していない場合はKHの値が下がります。対して、添加量を過剰に誤った場合はKHが高くなりすぎます。

急速な変動は白化を招きます。7-12 dkhの範囲で出来るだけ安定させることが理想です。サンゴを購入した直後は特に気を付ける必要があります。何故なら、お店のKHの値が分かりませんし、そもそもお店の環境に馴染んでいるのか、馴染んでいないのか、これらも判断がしにくいためです。

つまり、急速な変動を抑えるために必要な元々の環境が自然の海の値なのか、ショップの水槽環境なのか、どの値に合わせるべきなのかがわからないためです。そのため、8 – 9 dkhあたりに合わせておくのが最も無難です。KHの値を大きく外せば外すほどリスクが高くなるため、中間にしておくことでリスクを減らすことができます。さらに、8 -9 dkhであれば、自然の海より若干KHが高くミドリイシの成長速度も速くなることが予想されるためです。

ミドリイシは成長具合によってKHの消費量が増えていきます。そのため、ミドリイシが死んだりしていない状況で、添加量を変化させなかった場合はKHが低くなります。

 

細菌感染

細菌感染によるミドリイシの白化は実際に起こりえます。閉鎖空間の水槽は急速に感染が広がるリスクも高いため、感染が疑われる場合は、すぐに対応した方がよいでしょう。

ただし、これは水質を測定してからでも遅くはありません。実際に急速な白化現象が起きていても、水槽内のミドリイシ全部に伝搬することの方が稀です。これは私の水槽環境だけではなく、海外のお店で聞いた情報、海外のインターネット掲示板の情報などを総合した私なりの判断です。

ただし、何か思い当たるフシがあるならすぐに対応することは全滅を免れるための良い措置だと思います。例えば、ピンセットでミドリイシを刺してしまった、何らかの傷をつけてしまったなどの箇所から急速に白化が進んだなど、このような場合は明らかに水質変化を疑うよりも細菌感染を疑った方が合理的と思われるためです。

 

塩分濃度の変動

塩分濃度が適切な値にあるかどうかは、重要です。KHの値にも影響を与えますし、サンゴが白化するかどうかの原因になりえます。

どのようなタイプの比重計を使っていますか。浮力、屈折率、電気伝導度、それぞれメリットデメリットがあります。正確性は屈折率、または電気伝導度タイプが優れています。浮力タイプは大きく値がずれることがあります。

ミドリイシ飼育の場合は、34 – 35ppt@25℃(1.024 – 1.026g/cm2@25℃)に合わせるのが標準的です。こちらも適切な値になっているか、また急速に変動しないことが重要です。

変動要因としては、水の蒸発があります。特に日本の冬場は乾燥しているため、急速に水が蒸発し塩分濃度が高くなります。

 

温度が高過ぎる、または低過ぎる

自然界でみられている白化と同じ現象で、水槽であっても温度次第でミドリイシは白化します。ただし、前述の塩分濃度に比べると正確に測定しやすいため大きく測定値がずれるということは少ないです。

ただし、クーラーがない場合は要注意です。28℃がミドリイシが生きられる限界値です。少しの間であれば、28℃以上でも生きられるようですがいずれ白化してしまう可能性が非常に高いです。

温度が高くなり白化する前に、パステルカラーになることがあるようです。高温になり褐虫藻を吐き出してしまい、きれいなパステルカラーを呈します。しかし、死ぬ直前の状態ですので大変危険な状態です。

ショップの温度は22 – 25℃@日本、24 – 26℃@EUという範囲に入っていました。若干日本の方が低いことが多いようです。何故でしょうね。このあたりの理由は不明です。私の場合は25℃±0.5℃に合わせるようにしています。

 

光が強すぎる、または弱すぎる

強光障害、またはエネルギー不足によりミドリイシは白化します。光が強すぎる場合は、褐虫藻が光により死んでしまい白化していきます。エネルギー不足の場合は色が抜けることはあまりなく、突然白化し始めることが多いです。

LEDの場合は強光障害と光不足が同じサンゴに起きるという面白い現象が起きることがあります。これはLEDの光が直線的であり散光しにくい特性のために発生します。そのため、光が当たっている部分は強光障害になり、光が回り込んでいない部分がエネルギー不足になるということが実際に発生します。高いLEDは良いレンズを積むことで、これらを回避しています。

T5などの蛍光灯は光がよく散光しているため、このような現象は起きにくいです。そのため、お店によってはT5を使用していることがあります。

 

まとめ

ミドリイシが白化した際には原因を探ることが重要に思います。特に水質、その中でもKHと塩分濃度を測定することはすぐにできるため、行った方がよいと思います。

様々な要因があるため、これが原因だと判断するのは大変難しいのですが、一般的な白化の原因がKH要因であるということを頭に入れておくだけでも白化を防げる可能性を高めることになると思います。